瞑眩と好転反応

瞑眩(めんげん)好転反応という言葉はご存知でしょうか
元は漢方や鍼灸での言葉でしたが、いまでは整体やリラクゼーション、民間療法などでも 使用しているかもしれません


『漢方用語大辞典』(燎原)によれば
瞑眩(めんげん)とは
「服薬後に一時的にあらわれる種々の予期しない反応 たとえば悪心・頭眩・胸悶など」
と書いてあります

広く使われている意味合いでは
「一時悪化した後 良くなるというもの」
と説明することが多いです



◎本当の瞑眩とは
私が好きな先生の著作には、ご自身の体験として「瞑眩」が載っています
その先生が鍼灸師になる前のお話しだそうですが、大まかな流れは

・心臓発作により救急車で運ばれ一命をとりとめた
・重度の心臓肥大があったが、他には異常がなかった
・大きな病院での検査・治療を継続していたが心臓発作を繰り返していた
・縁あって、初めて灸治療を受け、自宅で3年間毎日ご自身でお灸を据え続けた
・1年目は、あまり変化なし
・2年目は、めまいが起こるようになり、激しい偏頭痛と嘔吐を伴うようになった → 次第に苦しむことなく吐くようになっていった
・3年目に、嘔吐の際にドロッと粘った黄色い塊を吐き出したのを最後に、心臓発作は全く起こらなくなった
・病院で検査を受けたところ、心臓肥大は治り、通常の大きさに戻っていた



◎私の治療経験としての瞑眩
私は自分で治療院を開業してから7年になりますが、「瞑眩」と思しきことは数回しか経験がありません
劇的に良くなることを期待されることもありますが、その際に一時的な悪化を伴うことは果たして良いことなのかどうか…という思いもあります

軽いものであれば、便通が良くなり出過ぎるくらい出た などということはよくあります
激しい変化は悪化したのではないかという戸惑いも生むため、からだの中の悪いものは苦しまずに自然に出るようにしたい と考えています


私がこれまで治療をした中で「瞑眩」と思しき症例をひとつを挙げると

・ある女性から問い合わせの電話があり、痛みでからだに力が入らずほぼ寝たきりだと言う
・来院時は家族に付き添われて一人では歩けない状態
・経緯と症状を聞くと
 9か月前から首肩の強い張りを感じるようになる
 4か月前から一気に悪化し約2か月間横になっていた
 1か月前に病院で詳しい検査をするも異常なし
 首肩だけでなく手首・膝・足首が痛くなり、力が入らない
 夜は痛みで眠れず、1時間ごとに目が覚める
 日常生活も困難でほぼ寝たきりのような生活
 以前、突発性難聴になったときに鍼灸で治ったそうで、それを思い出して近所の鍼灸院を探し、ゆかり堂に来院された とのこと

・施術中に姿勢を変えるのもやっとという状態だったが、施術後は一人で歩いて帰る
・翌日、家族から電話があり、「鍼灸には副作用があるのか?」とのお問い合わせ
 「37度後半の熱を出した」とのこと
・ごく稀にそういうことが起こる可能性はあるが、基本的に鍼灸の施術後に熱を出すことはないということを伝える
・のちに、ご本人から予約の電話があり、初診の5日後に来院
 痛みはだいぶ減り、夜は眠れている
 発熱中は、自分の感覚としては良くなっていっていると感じ不安はなかったが、家族が心配して電話をしてしまったとのこと

施術後に発熱した例は、私が把握している限りゆかり堂では他にありません
発熱し一時的に悪化したように見えますが、その後は痛みが減り かなり良くなっていました
これが「瞑眩」であり「好転反応」か、とそのとき感じたものです



初めて鍼灸を受けるという人の場合、 施術後に少しだるさが出る人が稀にいます
これは、初めて鍼灸を受ける緊張感や、初めて受ける刺激に対して、ちょっと疲れてしまったような状態、もしくはその人にとって刺激量が少し多かった状態だと思います
翌朝にはスッキリしていますが、これは好転反応というより、緊張や刺激量に対する反応であると思います



マッサージや整体、リラクゼーションやその他の民間療法などで、「好転反応」といっているものは、多くの場合「単なる言い訳」であるように思います
揉みほぐした後にからだが痛くなったりするのは、ほとんどが「揉み返し」という技量不足によるものが原因ですが、そうは言えないので「好転反応です」と言ったりします

その痛みが消えた後に元の症状が良くなっていれば、一時悪化した後 良くなる「好転反応」ですが、
以前と変わっていなければ、単に「揉み返し」だと思いま

よもぎ蒸しや岩盤浴などでも、どう見ても「のぼせている」状態でも「好転反応です」と言われたりします
これもその後に症状の改善などの良い変化があれば「好転反応」と言えるかもしれませんが、毎回のぼせて、元の症状の変化がないようであれば、体調を崩す前に考えたほうが良いと思います


「瞑眩」「好転反応」が、本来の意味を離れ、都合の良いように使われていることがほとんどです
本来は、一時的に悪化した後 劇的に良くなるものである
また、重病などが急激に良くなる時に稀に起こる現象である
ということを知っておくと、自分の身を守ることにつながるかもしれません

私は、からだが良くなっていくときは、つらさを感じずに自然に良くなるようにしたいと思っていますし、そういう治療が望ましいように思います


2018年10月20日